多くの個人投資家が苦しめられる、機関投資家の空売り。空売りは一見リスクが高そうに思われるのに、なぜ機関投資家は空売りを選択するのか?なぜその空売りは成功するのか?まとめていきたいと思います。
機関投資家は、以下の2点を把握しています。
- どのくらいの期間かけて、株価をある価格帯まで下落させたら、どのぐらいの人間が損切するかを分かっている。
- 株価を下落させる際に、それぞれの価格帯でどのくらいの買い需要があるかを予測できている。
つまり、ビッグデータを用いて計画的、理論的に個人投資家の動きをコントロールしているのです。個人投資家である我々はここに立ち向かわなければなりません。
Contents
機関投資家の売買手法と個人投資家の売買手法の比較
機関投資家 | 個人投資家 | |
何を売買の基準にするか? | 個人投資家の売買状況から買い上がり、売り浴びせが成功するかどうか | 企業の成長性や応援できるかどうか |
資金量 | 膨大、巨大、相場を動かせる規模 | 少ない、しばしば信用取引で身動きがとれなくなる |
計画性 | 緻密、売買の際に根拠を明確に上司に報告しなければいけない | 衝動的、感情的な売買も結構ある |
勝率 | 決算でリーディング部門が赤字になることは滅多にない。黒字前提。 | 退場者続出。勝つ人は一部 |
獲得情報量 | 企業IRに積極的に訪問、たまにインサイダーで捕まる場合も?(ホリエモンと村上ファンド事件) | 一般の投資家はせいぜいIRに電話問い合わせするぐらい |
売買手法 | AIや金融工学、高速アルゴを駆使し、作業スピードも速い | 考えてから手動で売買を決める |
特にまつやんが思うに、情報格差が大きいかなと思います。相場が閉まる3時近くに爆上げで引け後にIRとかしょっちゅうありますもんね。
あれ、インサイダーじゃなければなんなんでしょうか?
機関投資家の空売りはなぜ成功するのか?
個人投資家から金を巻き上げる算段がきちんとできているからです。
機関投資家 | 個人投資家 | |
売り崩された時 | 個人投資家の信用取引の平均建値を把握し、どこまで下げればどのぐらいの人が損切するか把握。 | 心理的揺さぶりに弱い。売り崩されるとひよる。 |
チャートの形でトレード | チャートそのものを作る。個人投資家が損切しやすい形を形成する。 | 過去のチャートから値動きを予測する。損切などの判断を行う |
資金の考え方 | 個人投資家が損切するまで、金がなくなる建値を計算し、そこまで下げる。 | 買い資金がなくなる。 |
株板の考え方 | 買いを枯渇させることに専念。買いたいという人がいなくなれば下げ放題。 | 高値で目一杯買うので、ナンピンする余裕がない。 |
利益の上げ方 | 個人投資家の損切に空売りを当てることで儲けを出す | 株価が上がることをお祈り。企業の成長性を信じる。ツイッターの有名投資家を信じる。 |
上記の表のように、機関投資家はきちんとシナリオをもっています。一方で多くの個人投資家の売買はふわふわしている印象です。
空売りのコストは買いよりも圧倒的に高い!
空売りをするためには、まず株券を借りてこなくてはいけません。株券の借り先というのは、大口投資家です。創業者が株を貸したりすることもありますね。
個人投資家にとっちゃあ、創業者の癖に、機関投資家に株券貸して、せこく稼ぎやがってなって思ったりもします。
さて、この株券を貸す行為、当然メリットがなければしません。株券を借りるときというのは、当然その手数料を株券の保有者に支払う必要があるのです。
また、株券を借りて、それを売っている間に配当が出たりすれば、その配当分まで支払うような契約になっている可能性もあります。
一方で株を買った場合は、配当が出ていれば配当ももらえるし、株を購入するコストというのは機関投資家であれば、かなり抑えられます。どう考えても買いの方が手数料が低い。空売りはコストの塊です。
なぜコストのかかる空売りを機関投資家は実行するのか?
儲かるからです。圧倒的に儲かるからです。ではなぜ儲かるのか?
- 買いで機関投資家が勝負する場合
- 空売りで機関投資家が勝負する場合
二つを比較してみましょう。そこに答えがあります。
買いで機関投資家が勝負する場合
買いあがっていく場合ですね。株価が100円の株を500円まで買いあがったとしましょう。平均取得額が250円だとします。この場合、機関投資家は売りさばく平均額が250円以上でないと損をします。
この時、機関投資家はどのような計算をしなければいけないのか?
- 株価を500円まで買いあがるための資金量
- 株価を500円まで買いあがった際の平均取得額
- 買いあがった後、売り始めた時に、個人投資家が250円以上で買ってくれるかどうかの計算
つまりです、他の投資家が買いあがった際にどれだけ株券を売ってくるのか?どの価格帯でどのくらい売ってくるのか?株価が下がった時にどれだけ買い需要があるのか?
これを計算するって結構難しくないですか?個人投資家と違って、機関投資家は儲かるシナリオがなければ、投資の実行は許可されません。
どれだけ資金を用意すればいいのか、どれだけ割安で仕込めるのか?株券を売りつける対象の投資家は本当に買い板を出すのか?
相場環境が悪くなった時もそのシナリオを実行できるのか?不確定要素が満載なのが機関投資家が買いで勝負することの難しさを表しています。
機関投資家が空売りで勝負する場合
株価が500円から200円まで空売りするとしましょう。その際に何を考えればいいのか?
- 株価を200円まで下げるのに必要な株券数
- 空売り後に買い戻しする時に、株券を売ってくれる他の投資家の動向
- 株が割安になっていく中で買い支えてくる他の投資家の動向
株券を買わせるのと、売らせるのどっちが簡単なのか?
金融工学というものが発達していく中で、人間がどの程度含み損になればどの程度の人数が損切するかというのは、とても計算しやすいものです。
ましてや、株取引には信用取引というものがあります。ロスカットさせてしまえば、強制的に株券を売らせることができますし、大きなロットで抱えている株券が長期間含み損だと株券を売りたくなる心理を発生させることができます。
一方で、買い需要というのは読みにくい。株価が上がれば上がるほど、そろそろ落ちてくるのではないかという心理が働きますし、チャートが下を向いている状況で買いがたくさん入るかというと、それはなかなか難しい。
アガリをするゲームではなく、相手をおろすゲームである
カイジの作者である、福本氏はアカギの中で麻雀は「麻雀はアガリをするゲームではなく、相手をおろすゲームである」と主人公に発言させました。
空売りも似たようなところがある。相手の恐怖、つまり、もっと株価が下がるんじゃないかという恐怖、お金を失うという恐怖につけこんで、株券を売らせる。
こっちの方が人間の生理的に正しいのです。
空売りのメカニズム、機関投資家が把握していること
- どのくらいの期間かけて、株価をある価格帯まで下落させたら、どのぐらいの人間が損切するかを分かっている。
- 株価を下落させる際に、それぞれの価格帯でどのくらいの買い需要があるかを予測できている。
行動心理学、統計学に優れている。金融工学の基本ともいえるところでしょう。ここのノウハウが半端なく優れている。そして買い上がりよりも遥かにコントロールしやすいし、儲かる。
機関投資家にマインドコントロールされ、切らされる。個人投資家は無知故に、食い物にされる。ノウハウに差があることをまずは知っておかないと、到底機関投資家には立ち向かえないでしょう。
合わせてこちらもどうぞ、具体的な空売り例です!