なぜ金融緩和すると円安になるのか?

この記事を読むと下記のベネフィットがある。

 

  • 金融緩和が円安を起こす理由が分かる。
  • 通貨の価値がなぜ変動するのかが分かる。
  • 国家のインフレ政策の基本理念が分かる。

 

為替というものは、両国間の通貨の価値の比率で決まる。まずは通貨価値というものがどのようにして決まるのかから考えていく。前提として、以下のことは頭に入れて欲しい。

日本円通貨の価値が他国の通貨価値と比較して減ると円安になる。

 

通貨価値の決まり方と国家のインフレ政策

 

なぜ国はインフレ(通貨価値の下落)を起こしたいのか?

日本円で考えてみる。インフレ率という言葉を聞いたことがあるだろうか?物価上昇率のことで、簡単に言えば、100円の品物が年間で何円値上がりしたかを示したものだ。モノの価値が高くなるということは、お金の価値が下がるということだ。

消費者目線から言えば、物価が下がった方がたくさんのモノが変えてハッピーなのだが、経済目線でいうと、あまり良いことではない。それは下記のような理由がある。

 

  • 政府は国債(借金)をして公共事業などに投資してお金を循環させるので、インフレ(お金の価値が下がる)にならないと借金の返済が上手くいかなくなる。
  • 物価が上がる傾向だと消費者が認識すれば、お金の価値が下がる前に消費しようと思うので、消費が加速する。

 

「明日から、お金の価値半分だよ!」と言われれば、みんな一生懸命お金を使うのではないか?そういうことだ。

国としては消費者を加速させていけば、企業は儲かり、給料も上がり、再投資も出来て国力が高まるという仕組みだ。基本的には、ある程度インフレさせた方がいいことはお分かりいただけたと思う。過度なインフレは通貨の信認を損なうので、これまた経済状況に良い影響とは言えないのだが、ここでは置いておこう。

 

インフレの度合いで通貨価値は決まる

先ほどの説明から分かることは、それぞれの国でインフレが起こり、通貨の価値が下落しているということだ。

しかし、インフレの度合いというのは国によって違う。日本のインフレ率はとても低いし、南アフリカなどの新興国ではインフレ率は高い。そうなるとどういうことになるか?

南アフリカのお金の価値の下落スピードが早いということは、日本円は円高ということになる。そう、インフレ率が低い方が基本的に通貨価値が高まるのだ。基本として、これが原則になる。

 

なぜ金融緩和すると円安になるのか?

 

金融緩和とは?具体的に何するの?

国がインフレを起こしたいことは十分に分かってもらったと思うが、インフレというものは簡単に起こせるものではない。日本でデフレが注目されているように、物価指数をコントロールするのは難しいのだ。

そもそも企業というものはコスト削減に努めて、消費者に安く提供しようと頑張るし、品質が同じなら安いものを買うというのが合理的な行動だ。

それを覆す方法として、あるのが金融緩和なのだ。金融緩和について具体的なことを述べる。

 

  • 金融機関が保有している国債を買い取って、金融機関の国債を通貨に変える。
  • 公定歩合(金融機関が日銀からお金を借りる金利)を安くして、金融機関が通貨をゲットしやすくする。

 

主として、この二つだ。両方ともに言えることだが、市中の通貨量が増大する。通貨を供給するような施策なので、財布の紐を緩めるイメージで金融緩和と言われる。この行為は日本銀行が行い、政府は直接は介入できない。

しかし、日銀の総裁は内閣総理大臣が指名することになっているので、事実上は政府の意向に沿った人選が行われている。アベノミクスは、安倍総理が金融緩和を目指していたので、意見が合致している黒田総裁を指名したことから始まった。

 

市中の通貨量が増えるとどうなるの?

少し、乱暴な言い方になるが、多いものは価値が少ないという認識がお金の世界にはある。ゴールドもプラチナも需要に比較して希少価値があるから、高価にやりとりされている。

お金も同じ考えで、金融緩和で市中のお金の量が少ないと、お金に希少価値が出てくる。逆にお金の量が増えればお金の価値は減るのだ。

分かっていただけただろうか?金融緩和はお金の量を増やす行為だから、円の価値が減り円安になるのだ。

 

お金の価値の下落はモノの価値の上昇

補足になるが、お金の価値が減ると、他のモノの価値が上がる。それはドルなどの通貨もそうだし、株価についてもそうだ。

実際にインフレになるかどうかは、モノの需要が高まらないと、達成は難しいだろうが経済の原則としてみんなが共通認識をもっている。

共通認識があるので、お金の価値が下がるぞ!と思って、株を買ったり、円を売ったりして実際に円安になったり株高になったりするのだ。

一種の幻想のようにも感じるが、市場の株価や為替はマーケットリーダー達のコンセンサスで決まる傾向があるので、そういう動きになるのは仕方ないことなのだ。

 

金融緩和でも円安にならない場合

 

マーケットというものは、予測し織り込むことで成り立っている。つまり実際に結果が出る前に値が決まってしまうのだ。

金融緩和が発表されたのに、円高になるケースがあるとすれば、もっと金融緩和されると思ってたのに、少ししかされなかったということである。

また、日本で金融緩和されても、アメリカでも行われれば、効果は帳消しになる。為替が両国間の通貨価値で決まるといったのはそういうことなのだ。

作成者: まつやん

IT勤務。ゲーム好き。